SNSを使った投資詐欺という言葉を聞くと、多くの人は「投資経験のない人が騙される話」「知識が乏しい人が引っかかるもの」という印象を持ちがちです。
しかし、現実はまったく違います。
近年、被害の中心にいるのは、これまで普通に株式投資や資産運用を行ってきたごく一般的な投資家です。
今回取り上げるのは、SNSをきっかけに2000万円もの被害に遭ったMさんの証言です。
Mさんは投資初心者ではありません。
国内株式への投資経験もあり、リスクという言葉の意味も理解していました。
それでも、SNS広告から始まった一連の流れの中で、気づかないうちに判断の軸をずらされ、結果として取り返しのつかない損失を被っています。
この事例が示しているのは、「詐欺かどうかを見抜けなかった」という単純な話ではありません。
正常な投資判断が、どのようにして破壊されていくのかというプロセスそのものです。
冷静さが失われる瞬間は劇的ではなく、むしろ非常に静かに訪れます。
そのため、多くの被害者が「どこで間違えたのか分からない」と口を揃えます。
これから、SNS投資詐欺がどのように普通の投資家を取り込み、高額被害へと導いていくのかを、感情論ではなく構造として解説していきます。

同じ場面に立ったときに、立ち止まるための判断材料を持っておいて下さい。
SNS投資詐欺が「普通の投資家」を破壊するまで
SNS投資詐欺の本質は、投資そのものを否定する点にありません。
むしろ、正しい投資観を持っている人ほど、入り口を見誤りやすい構造にあります。
詐欺グループは、「投資=危険」「投資=怪しい」という認識を持つ人よりも、「投資は自己責任で判断するもの」「情報を集めて選ぶもの」と考えている層を狙います。
Mさんも、「投資にはリスクがある」「絶対に儲かる話はない」という前提を理解していました。

しかし、その理解があったからこそ、「これは詐欺ではなく、投資判断の一つだ」と解釈してしまった場面が何度もありました。
SNS投資詐欺の被害額が高額化している理由
近年のSNS投資詐欺は、数万円や数十万円を狙うものではありません。
最初から数百万円、数千万円規模の資金を引き出す設計になっています。
その背景には、いくつかの明確な変化があります。
まず一つ目は、詐欺の入口が「広告」になっている点です。
SNS広告は、年齢、興味関心、資産状況に近い属性を狙って配信できます。
つまり、
・投資に関心がある
・一定の資産を持っていそう
・過去に金融関連の情報を見ている
こうした層に、ピンポイントで詐欺広告が届く仕組みになっています。
偶然目にした広告ではなく、最初から狙われて表示されているという点が重要です。
二つ目は、詐欺の内容が高度化している点です。
実在する外国株、仮想通貨、証券口座などを組み合わせることで、「投資として理解できる要素」が多く含まれています。
そのため、被害者は「完全な嘘ではない」と感じやすくなります。
三つ目は、グループ型の手法です。
LINEグループなどを使い、複数人が同時に利益を得ているように見せることで、金額に対する感覚が麻痺していきます。
「みんなこれくらいは投資している」
という空気が作られることで、送金額は自然に大きくなっていきます。

これらが重なった結果、SNS投資詐欺の被害額は、短期間で跳ね上がる構造になっています。
「自分は大丈夫」と思っていた人が狙われる構造
SNS投資詐欺が厄介なのは、「警戒心の高い人」を避けている点ではありません。
むしろ、自分なりの判断基準を持っている人を狙います。
Mさんも、
・知らない話にはすぐ乗らない
・情報は複数確認する
・少額から始める
といった、自分なりのルールを持っていました。
しかし、詐欺の構造は、そのルールを一つずつ無力化していきます。
例えば、少額から始めるという判断は、最初は正しく機能します。
しかし、画面上で利益が出ているように見えると、「次はもう少し増やしてもいい」という判断が生まれます。
これは欲ではなく、成功体験に基づく合理的判断として認識されます。
また、情報確認についても、グループ内で「先生」や他のメンバーが同じ説明を繰り返すことで、「すでに検証されている情報」に見えてしまいます。
ここで人は、自分が慎重であるという自覚を持ったまま、実は他人の用意した枠組みの中で判断している状態になります。
「自分は大丈夫」という感覚は慢心ではありません。
慎重に判断しているつもりでいる状態そのものが、詐欺に利用される。

これが、普通の投資家が狙われる最大の理由です。
今回の2000万円被害が示す現実
Mさんの2000万円被害が示しているのは、SNS投資詐欺が一部の例外的な事件ではないという現実です。
この金額は、
・一度の送金で失われたものではない
・突然判断を誤った結果でもない
という点が重要です。
小さな納得が積み重なり、
「ここまで来たのだから」
「今やめる方がリスクだ」
という判断が繰り返された結果、被害は拡大していきました。
さらに深刻なのは、詐欺被害が金銭だけにとどまらない点です。
Mさんは被害後、投資そのものに強い不信感を抱き、国内株式投資からも手を引いてしまいました。
つまり、将来に向けた健全な資産形成の機会まで失っているのです。
この事例が教えてくれるのは、SNS投資詐欺の本当の被害は「お金を失うこと」では終わらないという事実です。
・判断力への自信
・投資への健全な距離感
・将来に向けた選択肢

これらが同時に奪われていきます。
SNS広告から始まる詐欺の入口|最初は投資に見えない
SNS型投資詐欺の入口は、「投資を始めませんか」という直接的な誘いではありません。
むしろ、投資とは無関係に見える日常の延長線として設計されています。

被害者の多くが「最初は投資だと思っていなかった」と口を揃えるのは、このためです。
Instagram広告が使われやすい理由
SNS投資詐欺で特に多用されるのがInstagram広告です。
理由は単純で、投資に興味を持つ層を極めて正確に絞り込めるからです。
Instagramの広告は、年齢や性別だけでなく、
・過去に閲覧した投稿の傾向
・フォローしているアカウント
・投資、資産形成、経済ニュースへの関心
といった行動履歴を基に配信されます。
つまり、Mさんが目にした広告は、偶然表示されたものではありません。
最初から「投資に理解がありそうな人」に向けて出されていた広告です。
さらに、広告の内容も巧妙です。
・派手な儲け話を前面に出さない
・リスクに触れる言葉を混ぜる
・落ち着いたデザインと文章を使う
そのため、「怪しい副業広告」とは明確に一線を画します。
Mさんも、「よくある詐欺広告とは違う」「ちゃんとした情報発信に見えた」と感じたと語っています。
この時点では、広告は投資への勧誘ではありません。
情報提供や学習の入口として認識されるように作られています。

ここで警戒心が働かないのは、極めて自然な反応です。
LINEグループへの自然な誘導
広告をクリックすると、次に現れるのがLINEへの誘導です。
しかし、ここでも投資という言葉は前面に出てきません。
「無料で学べる」
「情報共有の場がある」
「期間限定で参加できる」
といった表現が使われます。
これらは、特別感を演出しながらも、拒否感を生みにくい言葉です。
LINEが使われる理由は、利便性だけではありません。
LINEは、
・個人的なやり取りに近い感覚
・日常的に使っている安心感
・通知による接触頻度の高さ
を同時に満たすツールです。
グループに参加した瞬間から、被害者は「情報を受け取る側」になります。
ここで重要なのは、自分から探しに行っている感覚が薄れることです。
Mさんも、「広告を見ただけなのに、気づいたらLINEグループに入っていた」と振り返っています。
この流れに、無理や強制はありません。

すべてが「自分で選んだ行動」に見えるように設計されています。
投資ではなく「学び」に見せる仕掛け
LINEグループに参加しても、すぐに送金や投資の話が出てくることはありません。
最初に行われるのは、学びの雰囲気づくりです。
グループ内では、
・相場の基礎知識
・海外市場の動向
・ニュースの解説
といった投稿が続きます。
一見すると、投資の勉強会や情報共有コミュニティにしか見えません。
ここで登場するのが、「先生」と呼ばれる人物です。
この「先生」は、
・断定的な表現を避ける
・リスクにも触れる
・慎重さを強調する
といった話し方をします。
そのため、参加者は「無責任な煽りではない」と感じます。
実際、Mさんもこの段階では「投資を勧められている感覚はなかった」と語っています。
さらに、グループ内には他の参加者が存在し、
「先生の解説が分かりやすい」
「勉強になる」
といった反応が自然に投稿されます。
ここでの注意点は、投資をしているという意識がまだ芽生えていないことです。
あくまで「学んでいる」「情報を受け取っている」段階に留まっています。
この状態が続くことで、
・発信者への信頼
・グループへの帰属意識
・自分は慎重に判断しているという自覚
が同時に育っていきます。
そして、いざ投資の話が出たとき、「突然の勧誘」ではなく、「これまで学んできた延長」として受け取られてしまいます。
ここで重要なのは、SNS投資詐欺の入口が、投資ではなく安心感と納得感で作られているという事実です。
派手な話は後回しにされ、まずは疑わない状態を丁寧に作る。

その結果、被害者は「詐欺に近づいている」という実感を持たないまま、次の段階へ進んできます。
LINE投資グループの正体|「先生」とサクラが作る虚構の成功体験
SNS投資詐欺の核心は、このLINE投資グループの内部構造にあります。
外から見ると、ただの投資コミュニティや勉強会に見えるかもしれません。

しかし中で起きているのは、成功しているように見せ続けるための精密な演出です。
投資の「先生」という権威付け
LINE投資グループの中心に必ず存在するのが、「先生」と呼ばれる人物です。
この呼び方自体が、すでに重要な役割を果たしています。
「運営者」や「管理人」ではなく、「先生」という言葉が使われることで、参加者の認識は無意識のうちに上下関係へと誘導されます。
この「先生」は、いきなり儲け話をすることはありません。
・相場の基本
・リスク管理の重要性
・感情的な投資の危険性
といった、正論しか語らない立場を取ります。
そのため、参加者は「怪しい人物」ではなく、「信頼できる指導者」として受け止めます。
Mさんも当初、「むしろ慎重なことを言っている」「ちゃんとした投資の考え方だ」と感じていました。
さらに、「先生」は常に一歩引いた姿勢を保ちます。
「最終判断はご自身で」
「無理はしないで下さい」
こうした言葉は、一見すると良心的です。しかし実際には、責任の所在を参加者側に移すための装置として機能します。
後になって問題が起きても、「自分で判断したはず」という形が残るため、疑念や怒りが向きにくくなります。
この段階で作られているのは、専門性があり、誠実で、責任を押し付けない人物像です。

投資詐欺において、この人物像ほど強力な武器はありません。
利益報告を繰り返す桜メンバーの役割
LINE投資グループには、「先生」以外にも重要な登場人物がいます。
それが、いわゆる「サクラ」メンバーです。
彼らは露骨に登場することはなく、あくまで普通の参加者として振る舞います。
サクラメンバーの役割は、非常に限定されています。
・先生の指示に従った結果を報告する
・利益が出たことを淡々と共有する
・感謝の言葉を短く添える
ここで重要なのは、派手さがない点です。
「一晩で何百万円儲かりました」
といった投稿は、むしろ警戒されます。
代わりに、
「少し利益が出ました」
「指示通りやって良かったです」
といった、現実的で控えめな成功体験が繰り返されることで、参加者は「この人たちも自分と同じ立場だ」と錯覚します。
Mさんも、「自分だけが取り残されている感じがした」と語っています。
サクラメンバーの存在は、焦りを煽るためではなく、安心して同じ行動を取らせるためにあります。
さらに厄介なのは、サクラメンバーが質問役も担う点です。
「初心者でも大丈夫でしょうか」
「少額でも参加できますか」
こうした質問をサクラが投げることで、先生がそれに答える流れが自然に生まれます。

そのため、参加者は「自分の疑問はすでに解消されている」と感じ、個別に確認する必要がなくなります。
集団心理が疑念を消す瞬間
LINE投資グループが本当に危険なのは、疑うことが浮いてしまう空気が作られる点です。
・多くの人が参加している
・否定的な発言がほとんどない
・成功報告が定期的に流れる
この環境に身を置くと、人は「おかしい」と感じても、その違和感を表に出しにくくなります。
疑問を投げかけることは、空気を壊す行為に見えてしまうからです。
また、集団の中では判断基準が変わります。
「自分がどう思うか」ではなく、「このグループではどうするのが普通か」が基準になります。
Mさんも、「最初は半信半疑だったが、周りが普通に参加しているのを見て、自分の感覚の方がズレているのかと思った」と話しています。
この感覚こそが、集団心理の本質です。
疑念が完全に消える瞬間は、「自分も一度やってみよう」と決めた時です。
ここで人は、
・グループの一員になる
・成功体験の当事者になる
という二つの立場を同時に得ます。
以降、疑うことは、自分自身の判断を否定することになります。
そのため、疑念は意識の外に押し出されていきます。
LINE投資グループは、単なる情報共有の場ではなく、判断を委ねさせるための装置なのです。
・先生という権威
・桜による成功演出
・集団心理による同調圧力
これらが組み合わさることで、「自分は冷静に判断している」という感覚を保ったまま、実際には用意された道を歩かされていきます。

ここで奪われているのは知識ではなく、疑うという行為そのものです。
2000万円被害に至る過程|なぜ送金を止められなかったのか
SNS投資詐欺で高額被害に至るまでの過程は、「一度の大きな判断ミス」で説明できるものではありません。
実際には、合理的に見える判断が積み重なった結果として、送金が止まらなくなる状態が作られています。

Mさんの2000万円被害も、冷静さを失った暴走ではなく、「その時点では納得できてしまう判断」の連続でした。
実在する株式や仮想通貨を使う巧妙さ
今回の詐欺で使われていたのは、架空の投資商品ではありませんでした。
・実在する外国株
・実在する仮想通貨
・名前を聞いたことのある市場
これらが組み合わされて提示されていました。
ここが、Mさんが「詐欺ではないかもしれない」と感じた最大の理由です。
完全に聞き慣れない商品であれば、人は警戒します。
しかし、
「この銘柄はニュースで見たことがある」
「この仮想通貨は取引所でも扱われている」
と感じた瞬間、投資対象そのものへの疑いは大きく下がります。
Mさん自身も、「中身は分からなくても、存在自体は本物だと思った」と語っています。
さらに、「先生」は常に断定を避けます。
「必ず上がる」
「絶対に儲かる」
といった言葉は使わず、
「可能性が高い」
「状況的に有利」
という表現に留めます。
これは投資の世界ではごく自然な言い回しです。
そのため、詐欺特有の違和感が消え、通常の投資判断と同じ枠組みで話を受け取ってしまいます。
この段階でMさんは、「投資先が実在する以上、あとは自分の判断の問題だ」と考えるようになっていました。

詐欺かどうかではなく、投資の是非として捉え始めたことが、次の段階への扉を開きます。
利益が出ているように見える偽投資サイト
送金後、Mさんが確認するようになったのが、指定された投資サイトでした。
そこには、
・保有資産
・評価額
・利益の増減
が分かりやすく表示されていました。
数字は日々変動し、ときには下がることもあります。
この上下動があること自体が、かえって信頼感を高めていました。
人は、常に右肩上がりの数字よりも、「上がったり下がったりしている数字」に現実味を感じます。
完全に作られた演出であっても、ランダム性が加わることで「市場と連動しているように見える」錯覚が生まれます。
Mさんは、「利益が出ているのを見て、少なくとも投資自体は動いていると思った」と振り返っています。
注意が必要なのは、出金を試みる前までは疑う理由がほとんど存在しない点です。
このサイトでは、
・利益は自由に表示される
・残高は増え続ける
・成功している実感だけが積み重なる
という状態が作られていました。

つまり、判断材料として与えられる情報が、すべて前向きなものだけだったのです。
送金が止まらなくなる心理的転換点
決定的な転換点は、出金を試みたときに訪れます。
「手続き中」
「追加確認が必要」
という説明が入り、すぐには引き出せません。
しかしこの時点でも、Mさんは詐欺だとは考えていませんでした。
なぜなら、
・利益は表示されている
・サイトは稼働している
・先生やグループが慌てていない
という状況だったからです。
ここで提示されるのが、
「出金のための条件」
です。
・手数料
・保証金
・追加証拠金
名目は変わりますが、共通しているのは、これを払えば次に進めるという説明です。
この瞬間、心理は大きく変わります。判断基準は、「安全かどうか」から「ここで止めると、これまでが無駄になるかどうか」に切り替わります。
Mさんも、「ここでやめたら、これまでの判断がすべて間違いになる気がした」と語っています。
これは欲ではありません。
自分の判断を否定したくない心理です。
さらに、LINEグループでは成功報告が続いていました。
「自分だけがうまくいっていない」
「もう少し頑張れば同じところに行ける」
そう感じた時点で、送金は「異常な行為」ではなく、必要な手続きとして認識されます。
こうして、
・一回の送金
・次の条件
・もう一度の送金
という流れが繰り返され、気づいたときには2000万円という金額に到達していました。
Mさんが無謀な判断をしたわけではなく
・実在する投資対象
・それらしく作られた投資環境
・集団の中で共有される成功体験
これらが組み合わさり、送金を止める理由が一つずつ消されていったのです。
そして最後に残るのは、「もう後には引けない」という心理だけです。
SNS投資詐欺が恐ろしいのは、ここまで進んでもなお、被害者本人が「騙されている」と確信できない点にあります。
送金が止まらなくなるのは、弱さではありません。

そうなるように設計された構造の中に置かれているからです。
被害後に残る現実|回復の難しさと精神的ダメージ
SNS投資詐欺の被害は、送金が止まった瞬間に終わるわけではありません。
むしろ、本当の苦しさはその後に始まると言っていい状況が、多くの被害者に共通しています。

金銭的な損失だけでなく、判断への自信、将来設計、そして「信じる力」そのものが大きく揺さぶられます。
弁護士に依頼しても戻らないお金
詐欺だと気づいた多くの人が、最初に考えるのが弁護士への相談です。
「法的に動けば取り戻せるのではないか」
「専門家なら何とかしてくれるのではないか」
この期待は自然です。
しかし、SNS投資詐欺の多くは、回収が極めて難しい構造になっています。
理由の一つは、送金先が海外であるケースが多いことです。
暗号資産や海外口座を経由して資金が移動している場合、日本の法的手続きが及びにくく、差し止めや回収が現実的ではありません。
さらに、名義や運営主体が実在しない、あるいは偽装されていることも珍しくありません。
Mさんのケースでも、弁護士を通じて一部の返金は実現しました。
しかし戻ってきたのはごくわずかな金額にとどまり、失った大半は回収不能でした。

この結果は、努力や判断の問題ではなく、詐欺の構造そのものが回収を拒む形になっていることを示しています。
弁護士費用倒れが起きる理由
さらに厳しい現実が、いわゆる「弁護士費用倒れ」です。
弁護士に依頼すれば、
・相談料
・着手金
・成功報酬
といった費用が発生します。
問題は、回収できる金額が小さい、あるいはゼロに近い場合でも、これらの費用は発生する点です。
SNS投資詐欺では、
・相手が特定できない
・資金の所在が不明
・法的手段が実効性を持たない
という条件が重なりやすく、結果として「お金は戻らず、費用だけがかかる」状態になりがちです。
Mさんも、回収額より弁護士費用の方が大きく、トータルではさらに損失が増える結果になりました。
弁護士が悪いという話ではなく、問題は被害者側が抱く「法的に動けば何とかなる」という期待と、現実のギャップです。

このギャップを理解しないまま動くと、二次的な経済的ダメージを受けるリスクが高まります。
投資そのものを信じられなくなる後遺症
金銭的な損失以上に深刻なのが、精神的な後遺症です。
SNS投資詐欺の被害者の多くが、
・自分の判断を信じられなくなる
・投資そのものを危険なものと感じる
・将来の資産形成を避ける
といった状態に陥ります。
Mさんも、被害後は国内株式投資から完全に距離を置くようになりました。
「もう二度と投資はしない」と考えるようになったのです。
これは一見、慎重な判断のように見えますが、長期的には健全な資産形成の機会を失うことにもつながります。
また、
「なぜあの時止まれなかったのか」
「自分はこんな判断もできなかったのか」
という自責の念が強く残ります。
この感情は、周囲に相談しにくく、孤立を深めやすい特徴があります。
結果として、精神的な回復に長い時間がかかるケースも少なくありません。
SNS投資詐欺の被害は、お金だけを奪うものではないのです。
信頼、判断力、将来への展望といった、生活の土台となる感覚が同時に損なわれます。
被害後の現実が「取り戻すか、諦めるか」という二択ではなく
・どこまでが現実的な対応なのか
・これ以上の被害をどう防ぐか
・心と生活をどう立て直すか

これらを冷静に考えることが、早期回復のポイントになります。
SNS型投資詐欺についてよくある質問
SNS型投資詐欺について多く検索され、実際に被害者や相談現場で繰り返し出てくるよくある質問や疑問に対して回答しました。
Q. SNS広告で見かける投資話はすべて詐欺なのでしょうか?
すべてが詐欺とは限りませんが、詐欺の可能性が非常に高い入口であることは事実です。特に、
・誰でも参加できる
・無料で学べる
・特別な情報を共有する
といった表現が使われている場合は注意が必要です。正規の投資は、不特定多数をSNS広告で集める形を取りません。
Q. 実在する株式や仮想通貨なら安全ではないのですか?
安全とは限りません。
SNS型投資詐欺では、実在する金融商品を「材料」として使うケースが非常に多く見られます。投資対象が実在していても、
・送金先
・取引の仕組み
・管理主体
が不明確な場合、その投資は成立していません。商品ではなく、お金の流れが透明かどうかで判断する必要があります。
Q. LINE投資グループはなぜ危険なのですか?
最大の理由は、個人の判断が集団に溶け込んでしまう点にあります。
グループ内では、
・成功報告が繰り返される
・否定的な意見が出にくい
・「先生」などの権威が存在する
という環境が作られ、疑うこと自体が難しくなります。冷静な判断が奪われやすい構造になっているため、非常に危険です。
Q. 少額から始めているなら問題ないですか?
問題があります。
少額から始めること自体は投資として正しい行動に見えますが、詐欺では少額は入口として使われるだけです。
画面上で利益が出ているように見せることで、
「次はもう少し増やしてもいい」
という判断を引き出すのが目的です。
Q. 利益が出ている画面を見せられましたが信じていいですか?
信じるべきではありません。
SNS型投資詐欺では、自由に数字を操作できる偽投資サイトが使われます。重要なのは、
・自由に出金できるか
・条件が後出しされないか
という点です。出金時に追加送金を求められた場合、その時点で詐欺を疑うべきです。
Q. 送金後におかしいと感じました。今からでも止める意味はありますか?
あります。
一円でも送金を止めた時点で、被害拡大は防げます。
「ここまで来たから仕方ない」と考える必要はありません。詐欺は途中で止める人ほど、被害を最小限に抑えられます。
Q. 詐欺だと気づいた後、お金を取り戻す方法はありますか?
現実的には非常に難しいケースが多いです。
警察や弁護士であっても、返金を保証することはできません。そのため、
「必ず取り戻せる」
「高確率で回収できる」
と謳う話は、二次被害の可能性があります。
Q. 弁護士に相談する意味はありますか?
ありますが、目的を整理することが重要です。
弁護士相談は、
・被害状況の整理
・今後の選択肢の確認
・これ以上の被害を防ぐ
という点で有効です。一方で、回収を前提に過度な期待を持つことは危険です。
Q. 被害に遭ったことが恥ずかしくて誰にも言えません
多くの被害者が同じ気持ちを抱えています。
しかし、相談が遅れるほど、
・精神的負担
・二次被害のリスク
が大きくなります。消費生活センターや公的相談窓口は、責めるための場所ではありません。一人で抱え込まないことが、回復の第一歩です。
Q. SNS型投資詐欺を防ぐために一番大切なことは何ですか?
「投資の話がSNSやグループで出てきた時点で、一度立ち止まる」ことです。
・広告
・LINEグループ
・先生や成功者の存在
これらが揃った時点で、その投資は慎重に距離を取るべき対象になります。
疑うことは冷たい行為ではありません。自分の生活と将来を守るための正常な判断です。
まとめ|SNS型投資詐欺から身を守るための判断軸
ここまで見てきた通り、SNS型投資詐欺は「特別な知識がない人」や「警戒心の低い人」だけを狙うものではありません。
むしろ、投資経験があり、自分なりの判断基準を持っている普通の投資家こそが、静かに、そして深く巻き込まれていきます。
2000万円という被害額は、極端な例ではなく、構造的に起こり得る結果です。

だからこそ重要なのは、相手の話の上手さや雰囲気ではなく、自分が拠り所にする判断軸をあらかじめ決めておくことです。
SNS広告の「簡単に稼げる」は疑ってかかる
SNS投資詐欺の多くは、「投資」という言葉を前面に出さずに始まります。
・学べる
・情報共有
・チャンスを知る
といった表現が使われますが、最終的に行き着くのは必ず送金を伴う話です。
正規の投資は、
・広告で大量に集客しない
・不特定多数に同じ話をしない
・急がせない
という特徴があります。
一方、SNS広告経由の投資話は、入口から出口までが短く設計されており、判断を急がせる仕組みになっています。

「簡単に稼げる」という言葉そのものだけでなく、楽そうに見える流れそのものを疑う姿勢が重要です。
グループ投資・先生ビジネスに近づかない
LINEグループや投資コミュニティで行われる投資は、個人の判断を奪いやすい構造を持っています。
・先生という権威
・成功報告を繰り返す参加者
・否定意見が出にくい空気
これらが揃うと、「自分で考えているつもり」のまま、実際には判断を委ねている状態になります。
投資は本来、他人に任せないからこそ成立する行為です。
誰かの指示通りに動く時点で、その投資はリスク管理が破綻しています。
グループで盛り上がっている投資ほど、距離を取る。

この意識が、被害を防ぐ大きな分岐点になります。
少しでも違和感を覚えたら第三者に相談する
SNS型投資詐欺の最大の敵は、一人で抱え込むことです。
・もう少し様子を見よう
・自分の判断を信じたい
・今さら人に聞けない
こうした気持ちが、被害を拡大させます。
少しでも違和感を覚えた時点で、
・家族
・信頼できる友人
・消費生活センター
・公的な相談窓口
など、自分の外に判断を出すことが重要です。
第三者の視点が入るだけで、詐欺の構造は驚くほど見えやすくなります。
SNS型投資詐欺は、知識の問題ではありません。
判断が歪む環境に置かれるかどうかの問題です。
・SNS広告から始まる投資話
・グループでの成功体験の共有
・先生や専門家を名乗る人物の存在
これらが揃った時点で、一度立ち止まる。

その行動が取れるかどうかが、被害に遭うかどうかを分けます。


