「簡単に稼げる」「スマホ1台で月◯十万円」といった言葉を、SNSで見かける機会が一気に増えています。
特に18歳・19歳の新成人にとって、こうした投稿やDMは決して他人事ではありません。
成人年齢が18歳に引き下げられたことで、クレジットカード契約や高額なサービス契約を、親の同意なしで結べるようになりました。
この変化は自由を広げた一方で、悪質商法にとっては“狙いやすい層”が生まれたことも意味しています。
実際に、高額SNSコンサルや暗号資産マルチ商法による被害相談は年々増加しています。
表向きは「ビジネスの勉強」「将来のための自己投資」を装いながら、実態は再現性のないノウハウ販売や、借金を前提とした勧誘であるケースも少なくありません。
そこで今回は、新成人がなぜ悪質商法のターゲットにされやすいのか、その背景と構造を法律的な視点も交えながら解説します。

感情論や精神論ではなく、「どこが危険なのか」「何を基準に判断すべきか」を明確にすることで、自分や身近な人の将来を守るための知識を身につけていきましょう。
新成人を狙う悪質商法の全体像|被害が急増する構造
悪質商法とは詐欺的な勧誘や不当な利益を目的として消費者に商品やサービスへの加入・購入を促す行為全般を指します。

SNSが日常的に使われるようになった現代では、若者を中心に巧妙な誘導が横行していることが国民生活センターをはじめ関係機関の報告から浮かび上がっています。
高額SNSコンサルとは何か|表向きの説明と実態
高額SNSコンサルとは本来、InstagramやX、TikTokなどのSNS運用やマーケティング戦略を専門家が教えるサービスと説明されます。
しかし、実際には成果が保証されないにもかかわらず高額な費用を請求する商法が多く見られます。
例えば、「あなた専用の集客戦略を提供」「最短1カ月でフォロワー1万人突破」などの魅力的な文言で関心を引き、数十万〜数百万円の契約につなげるパターンです。
消費者庁もSNSを通じたもうけ話には注意喚起を出しており、実際に「被害回復を謳った二次被害」に遭う可能性まで指摘されています。
表向きの説明で強調されがちなポイントは以下の通りです。
- プロによるSNS運用ノウハウを学べる
- 具体的な成果が出る仕組みがあるように見える
- 少数限定・先着順で価値が高いように錯覚させる
しかし実際の実態としては、契約後に提示されるのは一般的な情報商材や、誰でもネットで検索すれば手に入る内容ばかりであり、個別のコンサルティングがほとんど提供されないケースが報告されています。

このギャップは、顧客が「投資した費用分の価値を得られていない」と気づかないうちに契約を続けてしまう大きな要因です。
暗号資産マルチ商法の基本構造
暗号資産マルチ商法は、仮想通貨やNFTといったデジタル資産を用いた投資の仕組みで、加入者を増やすこと自体が収益となるネットワークビジネスを装った勧誘方法です。
これもSNSやメッセージアプリを通じて広がることが多く、「短期間で高いリターンが得られる」「紹介者と一緒に稼げる」というフレーズで若者を引き込んでいきます。
国民生活センターの相談データにも、暗号資産に関するトラブル相談が寄せられており、単なる投資損失ではなく勧誘・マルチ商法的なネットワーク形成に伴うトラブルが増加していることが示されています。
この基本構造の核心は以下の通りです。
- 初期参加費の支払い
暗号資産取引所への登録費や、特定のコミュニティへの加入費として高額な支払いが発生 - 紹介によるコミッション
新規加入者を紹介することで紹介者に報酬が入る仕組み - 投資の継続圧力
利益を出すためには更なる購入や借金して資金を投入する必要があると説得される - 流動性と情報格差
詐欺的な仕組みでは、実際に現金化できる場面が限られ、損失が固定化する
これらは投資のリスクというより、勧誘・加入者増加そのものが利益に直結する構造です。

法的には出資法や特定商取引法が関係する可能性があり、無登録営業や過度なリターン保証がある場合は違法となる場合もあります。
「若者向けビジネス」を装う理由
悪質商法が若者を狙いやすい仕組みとして成り立っている理由は、以下のように複数あります。
1. デジタルネイティブとしての行動特性
若者はSNS・動画プラットフォームを日常的に利用し、そこでの情報を信頼しやすい傾向があります。
アルゴリズムが関心のある投稿を優先して表示するため、同じ「稼ぐ系コンテンツ」が反復され、信頼性の錯覚が高まります。
2. 行政による成年年齢引き下げの影響
2022年4月の成人年齢引き下げにより、18歳・19歳でも親の同意なしに契約が可能になりました。
そのため、高額契約(SNSコンサル・暗号資産購入など)が本人の判断のみで進められるようになり、消費者としての保護が相対的に薄まっています。
3. 成功体験への憧れを突く心理的誘導
「自由」「稼ぐ」「自己実現」といった言葉は、将来への不安を抱える若者に刺さりやすく、短期間でそれが叶うような錯覚を抱かせます。
これは心理学的にも「確証バイアス」「過信効果」が働きやすい状況であり、冷静な判断が阻害されます。
4. 法的リスクへの認識不足
若年層は契約や法律の詳細なリスク評価に不慣れであることが多く、加入・購入後の取り消し権・クーリングオフ権の存在や適用条件を理解していないことが、被害の拡大を許しています。
特定商取引法におけるクーリングオフ制度は条件付きで存在しますが、そもそも適用されない商法も多くあります。
高額SNSコンサル・暗号資産マルチ商法は単純な投資や学習の枠を超え、心理的・社会的状況を巧みに利用した悪質な勧誘構造となっていることが理解できたのではないでしょうか。

被害を防ぐためには、情報の裏付けや法律的なリスクの理解が不可欠です。
実際に起きている被害事例|リアルなケースから学ぶ
重要なのは、被害者が特別に判断力が低かったわけでも、知識が極端に不足していたわけでもない点です。

むしろ、誰にでも起こり得る心理の流れの中で、少しずつ選択肢を奪われていったケースがほとんどです。
事例① SNSコンサル詐欺で98万円を失った大学生
ある大学2年生は、将来に対する漠然とした不安を抱えていました。
就職活動が本格化する前に「何かスキルを身につけたい」「周りより一歩先に進みたい」という思いが強く、SNSで副業やマーケティング関連の投稿を頻繁に見ていたといいます。
ある日、InstagramのDMで「学生のうちから月30万円稼いでいる人が多数いる」「あなたならすぐ成果が出る」と声をかけられ、無料面談に誘導されました。面談では、
- 自由な働き方ができる
- 企業案件を紹介する仕組みがある
- 自己投資としては安い
といった説明が続き、「今決めないと枠が埋まる」と契約を急かされます。
最終的に支払った金額は約98万円。
内訳は「SNS運用コンサル費」「教材費」「サポート費」などと説明されました。
しかし、契約後に提供された内容は、
- 決まったテンプレート通りに投稿する指示
- フォロワーを増やすための単純作業
- 個別相談はほぼなく、質問も抽象的な回答のみ
といったもので、収益につながる具体的な案件紹介は一切ありませんでした。
違和感を覚えて返金を求めたものの、「成果が出ないのは本人の努力不足」「契約書に返金不可と書いてある」と一蹴され、法的手続きを検討したものの、費用や精神的負担を考えて断念せざるを得なかったといいます。

このケースの本質は、「稼げるかどうか」ではなく、最初から成果が出なくても責任を負わない構造になっていた点にあります。
事例② 暗号資産マルチで借金を迫られた専門学生
専門学校に通っていた際に、友人から「一緒に将来のための投資をしないか」と誘われ、暗号資産関連のコミュニティに参加した事例です。
最初は数万円程度の投資から始まり、「今は勉強期間だから利益は後からついてくる」と説明されます。
コミュニティ内では、
- 成功者の体験談
- 高級車や海外旅行の写真
- 「行動した人だけが報われる」という空気
が常に共有されており、「辞める=チャンスを捨てる」という雰囲気が強く作られていました。
やがて、「もっと大きな利益を出すには投資額を増やす必要がある」と言われ、消費者金融やクレジットカードの利用を勧められます。
本人は「ここでやめたら今までの投資が無駄になる」「周りはみんな増やしている」という焦りから、借金をしてまで追加投資を行いました。
しかし、実際には資金の流れは不透明で、暗号資産の価値が下がる一方、コミュニティから抜けることへの心理的圧力が強まり、誰にも相談できない状態に追い込まれていきます。
最終的に家族に状況が発覚し、第三者の助けを得て関係を断つことができましたが、借金だけが残る結果となりました。

このケースでは、投資そのものよりも、人間関係と心理的拘束が被害を深刻化させていた点が特徴です。
被害者が共通して抱えていた心理状態
これらの事例に共通するのは、被害者が最初から「騙されてもいい」と思っていたわけではないという点です。
多くのケースで、次のような心理状態が重なっています。
まず、「今のままでは不安」「何か行動しなければ取り残される」という将来不安があります。特に新成人や学生は、進路・収入・社会的評価に対する不安が強く、そこにつけ込まれやすい状況にあります。
次に、「周りもやっている」「成功している人がいる」という集団心理です。
SNSやコミュニティ内では成功事例だけが強調され、失敗や撤退の話はほとんど共有されません。
その結果、自分だけが慎重になることに罪悪感を覚えてしまいます。
さらに、「ここまでお金や時間を使ったのだから、今さら引き返せない」という心理も大きな要因です。
いわゆるサンクコスト効果により、損失を確定させる決断ができず、被害が拡大していきます。
そして最も深刻なのが、「自分の判断ミスを認めたくない」「家族や友人に知られたくない」という感情です。
この感情が、相談を遅らせ、結果的に被害を長期化させます。
これらは決して特別な弱さではなく、人間として自然な心理反応です。
だからこそ、「自分は大丈夫」と思っている人ほど、同じ構造にはまりやすいと言えます。

重要なのは、被害事例を他人事として消費するのではなく、どの段階で立ち止まれるかを自分ごととして考えることです。
SNSを使った巧妙な勧誘手口|なぜ信じてしまうのか
この詐欺のポイントは、最初から「売り込み」に見えない設計と、断りづらい心理状態を段階的につくる構造にあります。
多くの被害者が「怪しいとは思わなかった」「普通の会話だと思った」と振り返る理由は、この仕組みを知ると明確になります。
Instagram・X(旧Twitter)・DM勧誘の特徴
SNSを使った勧誘の最大の特徴は、広告ではなく“個人の成功体験”として接触してくる点です。
InstagramやX(旧Twitter)では、いきなり商品やサービスの説明をすることはほとんどありません。
最初に行われるのは、
・何気ない日常投稿
・仕事や学業の合間の写真
・「最近ありがたいことに忙しい」といった曖昧な成功アピール
といった、共感や憧れを生みやすい投稿です。
これに「いいね」やフォローをすると、DMでのやり取りが始まります。
DMの初期段階では、
「学生ですか?」
「将来どう考えてます?」
「副業とか興味あります?」
といった、雑談に近い質問が続きます。
この段階では一切お金の話は出ません。
相手はあくまで「相談に乗ってくれる先輩」「親切な知人」の立場を取ります。
警戒心が下がったところで、
「実は自分も最初は不安だった」
「環境を変えたら人生が動き出した」
と、自分の成功ストーリーを語り始めます。
この時点で、相手は売り手ではなく“ロールモデル”として認識されるため、提案を疑う視点が弱まります。
最終的には、
「詳しく話せる人を紹介できる」
「無料説明会がある」
という形で、別の人物やオンライン面談に引き継がれます。

ここまで来ると、本人は「自分から選んで話を聞きに行った」と錯覚しており、強く勧誘された意識がほとんど残りません。
「簡単」「短期間」「誰でも稼げる」という罠
悪質商法に共通するキーワードが、「簡単」「短期間」「誰でも」です。
これらの言葉は一見するとありがちな表現に見えますが、実は冷静な判断を奪うための装置として機能しています。
まず「簡単」という言葉は、努力や専門性の必要性を曖昧にします。
本来、SNS運用や投資で成果を出すには、時間・知識・失敗経験が不可欠ですが、それを考えさせない効果があります。
次に「短期間」。
人は時間が限られていると感じると、情報の精査を省略する傾向があります。
「今動かないと損をする」「今がチャンス」という言葉は、比較検討や第三者への相談を妨げます。
そして最も危険なのが「誰でも稼げる」です。
これは責任の所在を巧妙にずらす表現でもあります。
結果が出なかった場合でも、
「やらなかったのはあなた」
「本気度が足りなかった」
と、失敗の原因を個人に帰属させることができます。
つまり、最初から成果に対する責任を負わない前提で設計されているということです。

これらの言葉が同時に使われている場合、そのビジネスは「仕組み」ではなく「期待」を売っている可能性が高いと考える必要があります。
友人・知人経由の紹介が危険な理由
SNS勧誘の中でも、特に被害が深刻化しやすいのが、友人・知人経由の紹介です。
この場合、多くの人が「まさかあの人が嘘をつくはずがない」と感じ、警戒心をほぼゼロにしてしまいます。
しかし実際には、紹介者本人も被害者であるケースが非常に多く見られます。
・成功すると信じ込まされている
・紹介しないと自分が損をする仕組みになっている
・「仲間を増やすことが善」と刷り込まれている
こうした状況では、紹介者は「騙している自覚」がないまま、周囲を巻き込んでしまいます。
さらに厄介なのは、人間関係が判断を縛る点です。
「断ったら関係が壊れるかもしれない」
「自分だけ逃げるのは申し訳ない」
こうした感情が、冷静な判断を妨げます。
ビジネスとして見れば不合理でも、人間関係の中では合理的に見えてしまうのが、この手口の怖さです。
結果として、金銭的被害だけでなく、友人関係や家族関係まで壊れてしまうケースも少なくありません。
これは通常の詐欺よりも回復が難しい点であり、「身近な人からの紹介ほど、一度立ち止まる」という姿勢が極めて重要になります。
SNSを使った勧誘は、決して派手な詐欺ではありません。
むしろ、親切・共感・成功談といった、日常に溶け込んだ要素で構成されています。

だからこそ、「怪しくないか」ではなく、「断る理由を奪われていないか」という視点で見直すことが、自分を守るための大きな判断基準になります。
法律的に見る悪質商法の問題点|違法になる境界線
重要なのは、多くの悪質商法が最初から明確な違法行為として設計されているわけではないという点です。
むしろ、「ギリギリ違法にならない形」を装いながら、消費者に著しく不利な契約を結ばせる構造が問題の本質です。
消費者契約法で問題になるポイント
消費者契約法は、事業者と消費者の情報格差・交渉力格差を是正するための法律です。
高額SNSコンサルや情報商材系トラブルでは、この法律が最も重要な判断軸になります。
まず問題になりやすいのが、不実告知です。
これは、
・事実と異なる説明をする
・将来の利益を確実であるかのように伝える
といった行為を指します。
例えば、
「このノウハウで稼げなかった人はいない」
「ほぼ全員が数カ月で黒字になっている」
といった説明が、客観的な根拠なく行われていた場合、不実告知に該当する可能性があります。
次に重要なのが、断定的判断の提供です。
「必ず回収できる」
「元本割れの心配はない」
といった表現は、消費者の判断を著しく誤らせるとして、契約取消しの対象になり得ます。
暗号資産やSNSビジネスのように、成果が個人差・市場変動に左右される分野でこのような説明がされていた場合、法的リスクは極めて高くなります。
さらに、困惑類型も重要です。
・今決めないとチャンスを失うと強調する
・長時間の面談で精神的に追い込む
・断ると人格否定をする
こうした行為によって冷静な判断ができない状態で契約させた場合、消費者契約法上、取消しが認められる可能性があります。
ただし注意点として、消費者契約法は「自動的に無効になる」法律ではありません。

あくまで「消費者が取消しを主張できる」制度であり、期限や立証の問題があるため、早期対応が極めて重要です。
特定商取引法・出資法との関係
次に、悪質商法と深く関係するのが特定商取引法と出資法です。
これらは、勧誘方法や金銭の集め方そのものを規制する法律です。
特定商取引法が問題になるのは、主に以下のケースです。
・SNSやオンライン面談による勧誘が「電話勧誘販売」や「業務提供誘引販売取引」に該当する場合
・契約内容や事業者情報の表示が不十分な場合
・クーリングオフに関する説明をしていない場合
特に業務提供誘引販売取引は、「仕事を提供するから登録料や教材費を払ってほしい」という構造のビジネスを想定しています。
高額SNSコンサルの多くは、この枠組みに近いにもかかわらず、「教育サービス」「コミュニティ参加費」などの名目で規制を逃れようとします。
一方、暗号資産マルチ商法では、出資法が問題になることがあります。
出資法では、
・元本保証をうたう
・配当を約束する
・実態のない出資を募る
といった行為を厳しく制限しています。
暗号資産という言葉を使っていても、実態が「人から集めたお金を分配するだけ」の構造であれば、違法な出資勧誘と評価される可能性があります。
ただし、これらの法律は名称ではなく実態で判断されるのが原則です。

そのため、表向きに「投資」「勉強会」「サロン」と書かれていても、中身次第では違法となります。
「違法にならないように見せる」手口の存在
現在の悪質商法の最大の特徴は、明確な違法行為を避けるノウハウが高度化している点です。
例えば、
・「必ず儲かる」とは言わず「可能性が高い」と表現する
・数字は出さず「人生が変わる」「環境が変わる」と抽象化する
・契約書には「成果保証なし」「自己責任」と明記する
こうした工夫によって、形式上は合法に見える設計がなされています。
しかし、ここで重要なのは、違法かどうかと、許される取引かどうかは別問題だという点です。
法律は最低限のラインを定めているに過ぎず、合法であっても消費者に著しく不利な契約は数多く存在します。
また、「契約書に書いてあるから大丈夫」という説明も要注意です。
契約書の記載内容よりも、勧誘時の説明ややり取りの実態が重視されるケースは少なくありません。
LINEやDM、録音された面談内容が、後から重要な証拠になることもあります。
悪質商法の本質は、「法律を守っているかどうか」ではなく、消費者が冷静に判断できる状態で、十分な情報を与えられていたかという点にあります。

少しでも「説明が曖昧」「判断を急かされた」「質問すると話をそらされる」と感じた場合、その時点で一度立ち止まることが、法的トラブルを未然に防ぐ最も確実な行動と言えます。
被害に遭った場合の正しい対処法|泣き寝入りしないために
高額SNSコンサルや暗号資産マルチ商法の被害に遭ってしまった場合に重要なのは、「もう払ってしまったから終わり」「契約書に書いてあるから無理」と自分で可能性を閉じないことです。
実際の相談現場では、正しい手順を踏んだことで返金や契約解消につながったケースも少なくありません。
クーリングオフ・取消しが可能なケース
まず確認すべきなのが、クーリングオフや契約取消しが使える余地があるかです。
ここを誤解している人は非常に多く、「ネット契約だから無理」「もう数日過ぎたから終わり」と諦めてしまうケースが目立ちます。
クーリングオフは、特定商取引法が定める一定の取引類型に該当する場合に認められます。
例えば、
・電話やオンライン面談による勧誘
・仕事提供をうたう高額な登録料・教材費
・勧誘時に事業者情報や解除方法の説明が不十分だった場合
こうした条件が重なっていれば、契約書を交付された日から一定期間内であれば無条件解除が可能なケースがあります。
一方、期間を過ぎていても可能性が残るのが、消費者契約法による取消しです。
次のような事情があれば、取消しを主張できる余地があります。
・「必ず稼げる」「ほぼ失敗しない」など、事実と異なる説明があった
・将来の利益を断定的に示された
・長時間の勧誘や精神的圧力で冷静な判断ができなかった
・不安を過度にあおられ、即決を迫られた
この場合、契約から時間が経っていても、不当な勧誘があった事実を示せれば道は残ります。
LINEやDM、Zoom面談の録音、スクリーンショットなどは、後から非常に重要な証拠になります。
「契約書に返金不可と書いてある」という説明を受けても、それだけで取消しが否定されるわけではありません。

契約に至る過程が問題視されることは十分にあり得ます。
消費生活センター・弁護士への相談タイミング
次に重要なのが、誰に、いつ相談するかです。
被害が疑われる場合、最初に頼るべき窓口は消費生活センターです。
消費生活センターでは、
・取引がどの法律に該当しそうか
・クーリングオフや取消しの可能性
・事業者への連絡文面のアドバイス
といった、初動対応を無料でサポートしてもらえます。
相談は早ければ早いほど有利で、支払い直後や勧誘直後であればあるほど、選択肢が広がります。
一方、次のような状況では、弁護士への相談を検討すべき段階に入っています。
・高額な借金をしてしまった
・事業者が返金交渉に応じない
・複数人が関与するマルチ構造になっている
・精神的に追い詰められている
弁護士に相談することで、
・内容証明による正式な解約通知
・法的根拠を示した返金請求
・訴訟や交渉の現実的な見通し
を整理できます。
すべてのケースで裁判が必要になるわけではありませんが、専門家が入るだけで事業者の態度が変わることも少なくありません。

「相談すると大ごとになるのでは」と不安に感じる人もいますが、実際には何もしないことが最もリスクの高い選択になるケースが多いです。
家族に相談できない心理とその乗り越え方
多くの被害者が最も苦しむのが、「家族に言えない」という心理です。
・自分の判断ミスを責められそう
・お金の話をするのが怖い
・失望されるのではないか
こうした感情から、一人で抱え込んでしまい、対応が遅れるケースが後を絶ちません。
しかし、現実には、家族が事実を知ったときに一番困るのは「もっと早く言ってくれればよかった」という点です。
時間が経てば経つほど、返金や解決の選択肢は減っていきます。
相談する際は、
「騙されたかもしれない」
「自分でもおかしいと感じている」
と、責任を一人で背負おうとしない言い方が有効です。
問題は「失敗したこと」ではなく、「これからどう立て直すか」にあります。
また、家族に直接話すのが難しい場合は、
・消費生活センターに一緒に行く
・第三者(学校の相談窓口など)を介する
といった方法も選択肢になります。
第三者の説明が入ることで、感情的な衝突を避けやすくなります。
被害に遭ったことは、恥でも弱さでもありません。
悪質商法は、人の不安や善意を利用して成り立つ仕組みです。
大切なのは、「一人で解決しようとしないこと」「早い段階で外部の力を使うこと」です。
泣き寝入りを防ぐ最大のポイントは、迷った時点で行動を止め、誰かに相談する勇気を持つことです。

それが、これ以上被害を広げないための、最も現実的で確実な行動になります。
コンサル、マルチ悪質商法についてよくある質問
Q. 高額SNSコンサルはすべて詐欺なのですか?
すべてが詐欺というわけではありません。
ただし、実態と説明が大きく乖離しているケースが非常に多いのが現実です。
本来のコンサルティングは、
・明確な業務内容
・提供範囲と限界の説明
・成果保証がないことの明示
が前提になります。
一方で問題となるケースでは、
・成果が出る前提で話が進む
・契約前に具体的な中身を説明しない
・失敗の責任をすべて本人に転嫁する
といった特徴が見られます。
「詐欺かどうか」よりも、契約前の説明と実態が一致しているかを見ることが重要です。
Q. SNSコンサルで「自己投資」と言われたら合法ですか?
「自己投資」という言葉自体に法的な意味はありません。
合法かどうかは、勧誘方法と契約内容の実態で判断されます。
たとえ「勉強代」「経験値」と説明されていても、
・不実告知
・断定的判断の提供
・困惑させる勧誘
があれば、消費者契約法の問題になる可能性があります。
言葉のイメージに惑わされないことが大切です。
Q. 暗号資産マルチと普通の暗号資産投資の違いは何ですか?
最大の違いは、利益の源泉です。
・普通の投資:価格変動や運用成果が利益の源
・暗号資産マルチ:新規参加者の資金や紹介が利益の源
後者の場合、投資商品を装っていても、実態は「人を集め続けないと成り立たない構造」になっています。
この場合、投資ではなく勧誘ビジネスと考えるべきです。
Q. 「違法じゃない」と言われましたが信じて大丈夫ですか?
「違法ではない」という説明は、安全であることを意味しません。
多くの悪質商法は、
・違法と断定されにくい表現
・グレーゾーンを狙った設計
で成り立っています。
合法かどうかよりも、
・内容が不透明
・判断を急かされる
・質問すると話をそらされる
といった兆候があるかどうかを見る方が、実践的な判断基準になります。
Q. 契約書に「返金不可」と書いてあったら本当に無理ですか?
いいえ、それだけで諦める必要はありません。
契約書の記載よりも、
・勧誘時の説明
・契約に至るまでの経緯
が重視されるケースは多くあります。
不実告知や困惑勧誘があれば、消費者契約法による取消しが認められる可能性があります。
Q. SNSやオンライン面談でもクーリングオフは使えますか?
取引の内容によっては可能です。
特に、
・電話やZoom等による勧誘
・仕事提供をうたう契約
・事業者情報の説明不足
がある場合、特定商取引法の対象になることがあります。
「ネットだから無理」と決めつけないことが重要です。
Q. 友人に紹介された場合でも悪質商法になりますか?
なります。
紹介者が友人であっても、取引の実態が違法・不当であれば問題になります。
また、友人自身が仕組みを理解しておらず、被害者であるケースも非常に多いです。
「知っている人だから安全」という考え方は、最も危険な判断のひとつです。
Q. 被害に遭ったらまず何をすればいいですか?
最初にやるべきことは、
・支払いを止める
・追加契約をしない
・証拠を保存する
その上で、消費生活センターに早めに相談することが重要です。
初動が早いほど、取れる選択肢は増えます。
Q. 家族や周囲に知られずに解決できますか?
ケースによりますが、一人で解決しようとすると不利になることが多いのが現実です。
特に高額な契約や借金が絡む場合、家族の協力が必要になる場面は避けられません。
早い段階で共有した方が、結果的に被害を最小限に抑えやすくなります。
Q. 「自分は大丈夫」と思っていても危険ですか?
はい。
むしろ最も危険です。
悪質商法の多くは、
・冷静な人
・真面目な人
・向上心のある人
を狙います。「騙される人の話」ではなく、「判断を少しずつ歪められる構造」として理解することが、再検索を防ぐ最大のポイントです。
これらの質問に一つでも心当たりがある場合、すでに判断環境が歪められている可能性があります。

大切なのは、正解を一人で探し続けることではなく、疑問を外に出すことです。
まとめ|新成人が自分の未来を守るために必要な視点
高額SNSコンサルや暗号資産マルチ商法の問題は、「一部の人が騙される特殊な話」ではありません。
成人年齢の引き下げ、SNS中心の情報環境、不安定な将来像という条件が重なった今、誰にでも起こり得る構造的なリスクとして存在しています。

だからこそ、新成人にとって重要なのは知識量ではなく、判断の軸をどこに置くかです。
「うまい話」は最初に疑う姿勢を持つ
「簡単に稼げる」「短期間で人生が変わる」といった話は、魅力的に聞こえる一方で、冷静な判断を奪う最大の要因でもあります。
ビジネスや投資において、リスクが語られない話は存在しないという前提を持つことが重要です。
本当に価値のある話であれば、
・うまくいかない可能性
・向いていない人の条件
・失敗した場合のリスク
も同時に説明されます。良い点だけを強調し、不利な情報を後出しにする話ほど、慎重に距離を取る必要があります。
「疑う=否定」ではありません。

判断を保留する力が、自分の未来を守ることになります。
SNS情報は稼げる根拠より仕組みを見る
SNSでは、結果だけが切り取られ、過程や失敗はほとんど見えません。
だからこそ、「いくら稼げたか」よりも、なぜその仕組みでお金が生まれるのかを見る視点が欠かせません。
・その収益は誰から支払われているのか
・参加者が増え続けないと成り立たない構造ではないか
・自分が途中で辞めたら誰が得をするのか
こうした問いに答えられないビジネスは、投資でも学びでもなく、期待を売っているだけの可能性が高いと言えます。

派手な実績やフォロワー数ではなく、構造の健全性を見る癖をつけることが重要です。
判断に迷ったら一人で決めないことが最大の防御
悪質商法の多くは、「今すぐ決めて」「他の人には言わないで」という環境を作ることで成立しています。
裏を返せば、誰かに話した瞬間に崩れる話でもあります。
判断に迷った時は、
・家族
・信頼できる友人
・消費生活センターや専門家
といった、利害関係のない第三者に話すことが最も効果的です。
自分一人で考えていると、どうしても感情やこれまでの投資額に引きずられますが、外の視点が入ることで現実的な選択肢が見えてきます。
新成人にとって本当に守るべきものは、「今すぐ稼げるかどうか」ではなく、将来に向けて選択肢を残すことです。
焦らず、立ち止まり、必要な時には助けを借りる。

その姿勢こそが、これからの人生で何度も自分を守る力になります。


