インターネットやマッチングアプリを介して出会った“信頼できそうな誰か”──
その関係が、実は国際ロマンス詐欺である可能性があります。
フェイスブックやインスタグラム、マッチングアプリでの「海外在住」「会えなさそうだけど真剣」という言葉が、安心と期待の入り口が巧妙な詐欺の構図を隠しています。
- 国際ロマンス詐欺の現状を理解する
- 事例紹介|実際に起きた国際ロマンス詐欺が示すもの
- 国際ロマンス詐欺被害にあった人たちの体験談
- 国際ロマンス詐欺被害を招く心理的トリガー|なぜ騙されるのか
- 相談・法的対処の方法|国際ロマンス詐欺被害から回復するために
- 予防策|国際ロマンス詐欺を未然に防ぐために
- 国際ロマンス詐欺についてよくある質問
- まとめ|「遠距離だからこそ」慎重に、信頼を自分で守る
国際ロマンス詐欺の現状を理解する
なぜ「海外」「遠距離」「恋愛」というキーワードがこの詐欺構造にとって特に機能するのでしょうか?
国際ロマンス詐欺の定義と特徴
国際ロマンス詐欺とは、被害者がオンライン上で築いたロマンティックな関係をきっかけに、犯罪者が金銭を要求したり不利な契約を結ばせたりする詐欺の一種です。
特に「相手が海外在住」「会えない状況」「送金を繰り返す」などの特徴が共通しています。
この手口ではまず、「プロフィール偽造」「魅力的な言葉による信頼構築」「長時間のメッセージ交換」「会う約束の先延ばし」が行われ、次に「突然のトラブル」「金銭の要求」「暗号資産・海外送金の誘導」などへと進みます。

さらに、被害者が“恋愛という心の領域”に踏み込んでしまうことで、理性的な判断を保てなくなるという点も速度が速いのが特徴です。
被害額・発生件数の最新動向
被害の規模は年々拡大しています。
例えば、米国ではFederal Trade Commission(FTC)が2022年のロマンス詐欺被害額を約13億ドルと報告しています。
日本においても、警察庁が「SNS型投資・ロマンス詐欺」として2025年9月末時点で認知件数3,964件(前年同期比+52.2%)という発表を出しています。
このような増加傾向には、インターネット利用の拡大・出会いアプリの普及・暗号資産の利用増加・国際送金手段の多様化という背景があります。
被害額の平均も1人あたり数千ドルから数万ドル規模に及ぶケースが多く、単なる“恋愛トラブル”ではなく“重大な経済的リスク”であると言えます。

また、報告されていない「隠れ被害」も多いため、実際の被害規模は公式数字よりもはるかに大きいと考えられています。
なぜ「海外」「遠距離」「恋愛」という組み合わせが詐欺に使われるか
この組み合わせが詐欺にとって機能する理由は、以下の要素によって説明できます。
- 距離・時差・物理的接触の欠如
相手が「海外在住」「出張中」などと言うことで、ビデオ通話や面会がなかなか実現しない状況を作り出せます。詐欺師は「会えない」状況を言い訳にさらに信頼を深め、金銭要求のタイミングを延ばせるため、被害者側としても「会えていないけど信じている」という心理が生まれやすいです。 - 恋愛という感情的つながりの活用
恋愛は日常生活の中で“理性を休ませる瞬間”を含みます。「自分を理解してくれる人」「離れていても心が通じる人」という幻想が、詐欺師によって巧みに刺激されます。感情が動いた状態では、金銭的判断や疑問の声を上げる余裕がなくなります。 - 国際性・異文化・信用の錯覚
海外という “ロマン” や “非日常性” は被害者に特別感を抱かせ、同時に「信じなければ損をする」「この人を逃したら次はいないかも」といった焦りを生みやすくなります。さらに、国際送金・暗号資産・海外口座という“複雑で追跡しづらい決済手段”が使われやすいため、詐欺師にとっては逃げ道・隠れ道が確保されている構図です。 - 技術的・社会的インフラの後押し
スマホ、SNS、マッチングアプリ、暗号資産、国際送金サービスといった技術インフラが揃った現在、詐欺師は地理的な制約を逆手に取りながら大規模な被害を量産可能です。プラットフォーム上で“信用の錯覚”を生む設計も指摘されています。

以上の要素が重なり、「海外・遠距離・恋愛」というセットは詐欺師にとって理想的な“ターゲット構造”を形成していると言ってよいでしょう。
事例紹介|実際に起きた国際ロマンス詐欺が示すもの
ここでは、実際に発生している国際ロマンス詐欺の具体的な手口・金銭的被害・被害者が辿ったプロセスを見ていきます。

「こういう詐欺がある」という抽象ではなく、どのように関係が構築され、どのように資金を奪われるのか、詳細を把握することで「自分には関係ない」と油断することを防ぎます。

プロフィール偽装・外国人パートナーを装う手口
国際ロマンス詐欺の出発点として最も典型的なのが、偽プロフィールの作成と“遠距離恋愛風”の関係構築です。
例えば、Federal Bureau of Investigation(FBI)は「詐欺師は偽のオンラインIDを使い、信頼を得てから金銭を要求する」と説明しています。
偽プロフィールには以下のような特徴があります:
- 海外在住を装った写真(たとえば白人男性が英語で挨拶)
- 軍人・エンジニア・NGO職員といった「尊敬される役職」を名乗る
- SNS上での活動を偽装し、チャット・メッセージで急速に親密感を築く
- ビデオ通話や対面を何度か約束するが、直前に「出張」「トラブル」などの理由で延期される
たとえば、詐欺師は「建設プロジェクトで海外に出張中だから顔合わせは難しい」とし、被害者側に「この人なら信頼できる」と思わせる状況を作ります。
こうして被害者は「会ったことないけれど信頼してしまった」という状況に追い込まれるのです。

このような最初のフェーズを理解することは、詐欺の入口で足を止めるために非常に重要です。
金銭送金・暗号資産への誘導・海外口座の罠
偽の関係が構築された後、次に詐欺師が手を伸ばすのが「金銭的搾取」です。
典型的な流れとしては、まず「緊急の出費」や「事故・手術・帰国費用」と称した名目で少額の送金を要求し、返済が約束されると見せかけてさらに大きな金額を要求するというものです。
さらに近年では、暗号資産(仮想通貨)への誘導や海外口座に振り込ませるという構図が目立っています。
たとえば、被害者が銀行口座に入金した後、詐欺師側が「仮想通貨に変える必要があります」「この口座でしか受け取れません」といった言葉で被害者をさらに追い込んでいきます。
このように送金経路を海外・匿名性の高い手段に移すことで、被害金が追跡されにくく、取り戻しが極めて困難になります。
被害者の中には「気づいたら数十万ドルを失っていた」というケースも報告されており、単なる恋愛詐欺を超える金融詐欺としての側面も強まっています。

このフェーズを理解しておけば、「恋愛関係なのに送金?」「仮想通貨での支払い?」と疑問を抱えることが早まります。
被害者の体験談から見える共通パターン
被害者の体験から浮かび上がる共通点を整理すると、以下のようになります。
- 初動段階では「信頼できる相手」「海外在住」「共通の趣味・価値観」などが強調される。
- 被害者は「この人を助けたい」「信じたい」「関係を続けたい」と思い、早めに感情的な結びつきが生まれる。
- その後、「会えない理由」「遅延」「支払い」「送金」が繰り返され、被害者が支援を続けるよう圧がかけられる。
- 被害が表面化するまで、少額→中額→大額という段階を踏み、返金・打ち切りが難しくなる。
- 被害後には「恥ずかしい」「人に言えない」「誰にも相談できなかった」という心理的な負担が大きく、被害の「隠れ化」が起きる。
実際に、FBIが公開した被害者の証言では、「ビットコイン経由だった」「自分を信じてくれていたと思っていたのに…」というものがあります。
研究論文でも、恋愛詐欺(romance fraud)は「被害者が孤独・心理的脆弱・オンライン時間が長い」という条件と関連していると指摘されています。
これらの共通パターンを知ることで、「自分にも起こりうる」と自覚し、早期に“疑いの目”を持つことが可能になります。
国際ロマンス詐欺は偽のプロフィールから始まり、感情的な信頼を構築し、最終的には金銭的な搾取へと移行します。

この流れを把握しておくことが、“騙される前”の予防として非常に有効です。
国際ロマンス詐欺被害にあった人たちの体験談
ここでは、実際に被害に遭った人たちの“声”から、どのような経緯で信頼を持ち、どのように金銭的・精神的な打撃を受けたのかを紹介します。
体験談①:英国在住女性「2年半で10万ポンドを失った」
英国の新聞記事では、50代以上の年齢層を中心に「国際ロマンス詐欺の被害が52%増加した」と報じられています。
その中で語られた一人の女性は、オンラインで知り合った男性に対して、2年半にわたり10万ポンド(約1,500万円以上)を送金しました。
男性は「テキサス在住の米国/ノルウェー二重国籍」「海外出張中」「君を愛している」と語り、写真や詩、メッセージを送り続け、彼女は「この人と未来を作りたい」と思い込んでしまったのです。
数か月後、彼の「出張費」「税金支払い」「家族の緊急手術」という名目で金額が膨れ、貯蓄を使い果たし、母の遺品まで質に入れる事態になりました。
彼女は、「私は愚かだった」と思いながらも、「あれほど信じたのだから責められても仕方ない」と自らを責め続けています。
この体験は、「感情的な接近」→「信頼構築」→「金銭要求」→「断れない状況」という典型的な構図を鮮やかに描出しています。

しかも、被害者側に「恥ずかしい」「自分が悪かった」と感じさせる心理的な負担が重く、相談に至らずに終わってしまうケースも相当数あると研究では指摘されています。
体験談②:家族の証言「米軍兵士を装った詐欺」で2万ドル失った実兄のケース
オーストラリアの消費者保護サイトでは、兄がFacebookで“米軍兵士”と名乗る人物と会話を始め、iTunesカードを送らされた後、最終的に8,000ドル(約90万円)を請求されてしまった例が紹介されています。
このケースでは、「彼女の活動地はアフガニスタン」「任務中」「ゴールドや手付金が必要」という話が続き、兄は「信じたい」という気持ちと「もしかしたら…」という疑念の間で苦しみ続けました。
家族は「これは詐欺だ」と伝え続けましたが、兄は「いや、彼は本当に僕のことを想ってくれてる」と信じてしまい、送金を止められなかったのです。
後になって、家族は「彼は被害を認めたくない、恥ずかしい」「人に言えなかった」と証言しています。

このように、親しい人から見ても「冷静な説明をしても聞き入れない」場合が多く、詐欺師が被害者の心理的防御を巧みに解除してしまっている点に注目できます。
体験談③:偽プロフィールの被害影響「私の写真が15年も使われ続けた」
別のケースでは、米国の男性が自身の写真がSNSやマッチングアプリ上で15年間以上にわたって偽プロフィールに使われ続けていると明かしています。
多数の女性から「あなたですよね?」と連絡を受けた彼は、実際には詐欺師がその写真を使って女性たちを惹きつけ、金銭を奪っていたと証言しています。
これによって、被害女性だけでなく「写真の本人」も被害の当事者になりうるという事実が浮かび上がります。
この一例が示すのは、国際ロマンス詐欺が“個別の悪意”だけでなく、“大量の偽造プロフィール・グループ営業・画像流用”という“構造的犯罪”であるということです。

被害を出す側の仕組みが明らかであれば、防御側にも知るべき対策が生まれます。
体験談④:暗号資産・恋愛詐欺の融合「数百万円を失った中東で働く実例」
最近報じられたトルコのケースでは、男性が「WhatsAppで“ドーラ”という女性”から偶然連絡を受け、投資案件を勧められ約40万トルコリラ(約数百万円)を暗号資産に投じて全て失った」と語っています。 Business Insider
この “ドーラ” という女性はマレーシアのインフルエンサーの画像を詐欺師が無断で使用しており、動画通話やチャットで信頼を築いた上、徐々に「投資で儲かるから一緒にやろう」という話に移行しました。
最終的には恋愛関係の枠を超えて“投資詐欺+恋愛詐欺”という複合型被害になっており、被害者が抱えたのは単なる金銭損失ではなく、「自分の判断力を信じられなくなった」という深い心理的傷でした。
共通して見える被害者の心理的および社会的特徴
- 孤独や生活の変化(離婚・死別・転職)など「心の隙間」がある時期に被害が起こる。
- オンラインでの関係が早期に“信頼感”“安心感”を与え、その後送金へと移行する構図が共通。
- 被害が明らかになった後も「恥ずかしい」「話せない」「人に相談しづらい」という心理が被害の隠蔽を助ける。
- 被害金額が小さいケースでも“信頼を裏切られた”という経験が大きい。多額の送金が伴えば、貯蓄が消えたり生活レベルが下がったりすることもある。
- 海外・暗号資産・遠距離という条件が加わることで、“被害からの回復”が困難になる構造が見える。
注意すべきポイント
これらの体験談を通じて、あなた自身や周囲の人が被害に遭わないための行動が明確になります。
- オンラインで知り合った人から「送金」「暗号資産投資」「証拠を撮らせるビデオ通話」などの要求をされたら即時に警戒を。
- 自分が「恋愛相手に仕草されたから信じた」という事実を持つことは、詐欺師にとって格好の入り口になると認識する。
- 被害を疑っても「恥ずかしいから相談しない」という選択は二次被害を生む可能性が高い。誰かに話す・相談する勇気を持つこと。
- 写真検索・リバース検索で「同じ写真が他の人のプロフィールに使われていないか」確認する習慣を持つ。
- 海外・遠距離・暗号資産という要素が絡む出会いに対しては、一層慎重になる。

国際ロマンス詐欺の被害は「金銭トラブル」だけでなく、「信頼を裏切られた心の傷」「生活を根底から揺るがされた経験」になってしまうのです。
国際ロマンス詐欺被害を招く心理的トリガー|なぜ騙されるのか
国際ロマンス詐欺が成立する背景には、金銭的な仕組みよりも“心理の隙”が深く関わっています。
詐欺師は被害者の心の状態を読み取り、弱点を刺激しながら信頼と依存を作り上げます。

恋愛という本能的な感情は、判断力や批判的思考を弱める性質があります。
孤独・信頼・遠距離恋愛の心理
国際ロマンス詐欺の被害者に多いのが、“孤独感”や“情緒的なつながりへの飢え”を抱えているケースです。
詐欺師はこれを敏感に察知し、優しいメッセージ・共感・褒め言葉・価値観の一致を使って短期間で心理的距離を縮めていきます。
特に以下のような心理状態が、被害の入り口になりやすいと指摘されています。
- 孤独感が強いと、小さな優しさでも大きな安心に変換されやすい
- 対面していない“オンライン恋愛”ほど、自分の理想を相手に投影しやすい
- 遠距離恋愛は「会えない=疑いづらい」という構図が成立しやすい
遠距離恋愛は、本来「会えない寂しさ」を乗り越える関係性が必要ですが、詐欺師はその“会えない理由”をむしろ利用し、疑念を封じ込めます。
「忙しい軍任務で会えない」
「海外駐在中だから帰れない」
「ビデオ通話できる環境にいない」
これらの理由はもっともらしく聞こえるため、被害者は“仕方ない”と受け止めてしまいます。
また、テキスト中心のやり取りは想像力を刺激し、相手の実像よりも“理想化された人物像”を信じてしまう傾向が強まります。

詐欺師はこの心理的特性を理解したうえでメッセージを送り、数週間〜数ヶ月かけて依存状態を作り出すのです。
「将来結婚」「海外移住」などの甘い言葉の罠
国際ロマンス詐欺で頻出するフレーズが、次のような“未来を匂わせる言葉”です。
- 「日本に行ったらあなたと結婚したい」
- 「二人の家を買うために資金を貯めている」
- 「あなたと一緒の未来しか考えられない」
- 「海外に移住して一緒に暮らそう」
これらの言葉は、被害者の“承認欲求・安心感・特別感”を満たし、感情を大きく揺さぶります。
心理学では、こうしたアプローチを 「Love Bombing(ラブボミング)」 と呼びます。
短期間で過剰な好意や未来の約束を与え、相手が冷静に考える余裕を奪う手口です。
実際の恋愛では滅多に起こらないスピードで未来を語るため、本来なら不自然なはずですが、オンラインの匿名性と“海外”という要素が不自然さをぼかします。
さらに、将来の約束を盾に「そのために今お金が必要なんだ」と金銭要求に繋げる流れが定番です。
- 結婚のための渡航費
- 引っ越し費用
- 国際送金が止められた
- 税金や保険料の未払い
- 医療費の緊急支払い

“未来のため”という文脈が入るだけで、冷静な判断が崩れる人は少なくありません。
AI・SNS・マッチングアプリが詐欺に利用される構造
近年、国際ロマンス詐欺が急増している最大の理由の一つが、AI技術とSNSの発達にあります。
詐欺師は以下のようなツールを活用しています。
- AIで生成したプロフィール写真(美男美女の偽写真)
- ChatGPTのようなAIで自然な英語・日本語メッセージを自動生成
- SNSで大量の偽アカウントを管理し、信頼度を高める
- マッチングアプリのアルゴリズムを利用してターゲットに表示されるよう調整
例えば、AIで生成された“存在しない人物の写真”は、一般の顔写真よりも好感度や魅力度を高く見せる傾向があり、被害者の心を掴みやすいと研究で指摘されています。
また、メッセージ文の作成もAI化され、「24時間・同時に複数人へ・高品質の恋愛文」を送り続けることができます。
これにより、従来よりも詐欺師側の作業効率が大幅に上がり、被害も増加しました。
さらに、SNSの“相互フォロー”や“写真投稿”を使い、「リアルな人柄」を演出するため、被害者は疑いにくくなります。
近年ではディープフェイクによるビデオ通話詐欺も現れ、顔が動く、瞬きするなどの映像までAIで生成されるケースが報告されています。
インフラ・技術・社会構造が詐欺を助けてしまう仕組みが整ってしまっているのです。
国際ロマンス詐欺は、被害者の“心の隙”を狙うタイプの犯罪です。
そのため、対策の出発点は「相手ではなく、自分の心理を理解すること」にあります。
どんなに冷静な人でも、恋愛と孤独と希望が絡むと判断力が揺らぎます。

その仕組みを知ることで、詐欺の誘導に巻き込まれず、自分の心とお金を守ることができます。
相談・法的対処の方法|国際ロマンス詐欺被害から回復するために
国際ロマンス詐欺は、個人では解決が困難な性質を持つ犯罪です。
「恥ずかしい」「自分の判断ミスだと思われそう」と感じて相談をためらう人が多いですが、問題を放置すればするほど、証拠が消え、資金追跡の可能性も失われます。

専門機関との連携や、証拠の正しい保全方法、金融機関への素早い対応が被害回復のカギとなります。
警察・消費者機関・国際的な連携
まず最初に行うべきことは「誰かに相談する」ことです。
国際ロマンス詐欺は海外IP・暗号資産・架空口座を使うため、個人で解決するのはほぼ不可能です。

警察・行政機関・国際機関との連携を活用することで、少しでも資金回収や加害者特定の可能性を高めます。
■ 1. 警察(サイバー犯罪相談窓口)
警察庁は「サイバー犯罪相談窓口」を設置しており、国際詐欺も相談対象です。
相談時は以下の情報を伝えるとスムーズです。
- 被害額
- 相手とのやり取りの時系列
- 送金経路
- SNSアカウント情報
- 暗号資産ウォレットのアドレス
詐欺にあたるかどうかの判断も警察が行いますので、「恋愛だから相談しにくい」とためらわず利用することが重要です。
■ 2. 消費生活センター(188)
日本国内の相談窓口として最も利用しやすい機関が「188(いやや)」です。
被害が詐欺かどうか判断できない段階でも相談可能で、クレジット会社・銀行との調整まで助言してくれます。
■ 3. 国際的な連携機関
国際ロマンス詐欺は、海外犯罪組織や多国籍グループが関わるケースが多いため、以下の潤滑機関が活用されます。
- Interpol(国際刑事警察機構)
- Europol(欧州刑事警察機構)
- FBI Internet Crime Complaint Center(IC3)
日本の警察を通じて国際捜査が行われることもあり、海外の被害者と情報共有される場合もあります。

被害総額が大きいほど、捜査協力が得られる可能性も上がります。
証拠保存の手法(メール・チャット・SNSの記録など)
証拠の有無は、被害回復の成否を大きく左右します。
詐欺師は証拠を残さない行動を意図的にとるため、被害者側が“先に証拠を固める”必要があります。
■ 保存すべき主要証拠
- メッセージ履歴(LINE, Messenger, WhatsApp, Instagram DM など)
- 相手のプロフィール(スクショ)
- 着信・ビデオ通話の履歴
- 送金記録(銀行・PayPay・Wise・暗号通貨など)
- 相手の口座番号・ウォレットアドレス
- 「金銭を求められた」具体的なメッセージ
- 偽サイト・投資プラットフォームの画面キャプチャ
スクリーンショットだけでなく、画面録画も併用すると信頼度が高まります。
■ 証拠保存のポイント
- 相手のアカウントはブロックしない(証拠が消える場合がある)
- 自分の端末以外にもクラウド保存(Google Driveなど)
- LINEの場合は「トーク履歴のバックアップ」を即実行
- 暗号資産の取引履歴はCSVでダウンロード
詐欺師は
「送金の話は削除していいよ」
「スマホを買い替えて」
などと証拠を消すよう仕向けるケースが多いので要注意です。

証拠が確保できていれば、後の返金手続き・警察相談・弁護士依頼の際の成功率が大幅に上がります。
クレジット・銀行・暗号資産取引所への対処法
送金後は“1分でも早い対処”が必要になります。
金融機関への初動が遅れるほど、資金回収の可能性は著しく低下します。
■ 1. クレジットカード(支払停止の抗弁)
クレジット決済が絡む場合、「支払停止の抗弁」が使えるケースがあります。
- 投資サイトへのクレジット入金
- 偽サービスの購入
- 海外サイトでの申し込み
カード会社に以下を伝えましょう。
- 詐欺である可能性
- 証拠となるメッセージ・URL
- 未承認または不正な請求
審査に時間はかかりますが、承認されれば支払い義務が止まることがあります。
■ 2. 銀行送金(口座凍結・組戻し)
銀行振込の場合、最速で行うべきは 組戻し依頼 です。
ただし、海外送金の場合は組戻しが難しく、被害回復は厳しいのが現実です。
国内への送金なら、詐欺の疑いがあれば金融機関が「口座凍結」に動く可能性もあります。
そのため、1分1秒でも早く連絡することが重要です。
■ 3. 暗号資産取引所(ウォレット凍結依頼)
暗号資産の送金の場合は、
- 国内取引所(bitFlyer, Coincheckなど)
- 海外取引所(Binance, OKXなど)
の双方へ“ウォレットアドレスの凍結要請”を行います。
ただし、次の理由から成功率は高くありません。
- 詐欺師が別ウォレットに即時移動する
- 海外取引所が日本の警察依頼に応じない
- ミキサー経由で追跡困難になる
それでも、早期に手続きすることで凍結成功の可能性がゼロではなくなります。
国際ロマンス詐欺の被害から回復するには、
- 相談の早さ
- 証拠保存の徹底
- 金融機関への初動の速さ
が何より重要になります。
被害に遭ってしまったこと自体は決して“恥”ではありません。
むしろ、詐欺師が高度化している現代では誰もがターゲットになり得ます。

一人で抱え込まず、専門機関と連携することが回復への最短ルートです。
予防策|国際ロマンス詐欺を未然に防ぐために
国際ロマンス詐欺を確実に回避するためには、「怪しいと気づいてから対処する」のでは遅く、最初の出会いの段階で“危険な兆候”を見抜く力が欠かせません。

詐欺は、甘い言葉を投げかけてくる瞬間ではなく、「最初にプロフィールを見た瞬間」「メッセージが届いた段階」から始まっています。
出会い系・マッチングアプリの利用時にチェックすべきこと
マッチングアプリやSNSは“本物”と“詐欺”が混在している場所です。
そのため、関係が深まる前の段階で プロフィール・行動・メッセージの特徴を冷静に見極めることが必要です。
以下のポイントを必ずチェックして下さい。
■ 1. プロフィール写真が「完璧すぎる」
詐欺師の多くは
- AI生成の美男美女
- 海外モデルの盗用画像
- 軍服・医療用白衣など好感度の高い写真
を使っています。
Google画像検索で逆引きすると「まったく同じ写真が海外モデルサイトにある」ことも珍しくありません。
■ 2. 住んでいる場所・職業が“非現実的”
「海外在住の軍人」「国際機関の医師」「大企業のエンジニア」など、
高収入・高身分で現実離れした肩書を名乗るのは典型的な詐欺パターン。
これらの肩書は
- 会いに行けない理由
- ビデオ通話ができない言い訳
- 緊急トラブルを起こしやすい
という詐欺にとって都合の良い設定です。
■ 3. メッセージが早い段階で“恋愛寄り”になる
自然な恋愛ではあり得ないスピードで
- 「あなたを愛している」
- 「運命だと思う」
- 「ずっとそばにいたい」
などの表現を使う場合は危険信号です。
これは Love Bombing(好意の爆撃) と呼ばれ、詐欺師が意図的に仕掛ける心理操作です。
■ 4. 連絡手段をアプリ外に移そうとする
マッチングアプリ側は詐欺アカウントを削除することがあるため、
詐欺師は早期に以下へ誘導します。
- Telegram
- Instagram DM
- LINE
アプリ外へ移行させようとする相手は初期段階で疑うべきです。
相手が「海外在住」「軍人」「医師」などを装う場合の赤旗
国際ロマンス詐欺では、特定の肩書・設定が非常に多く使われています。
理由は単純で、これらの肩書は“権威性・信頼性・尊敬”のイメージが強いため、疑われにくいからです。
代表的な赤旗は次のとおりです。
■ 1. 軍人(特に米軍)
最も多い設定のひとつ。
典型的な言い訳は以下。
- 「軍務中で自由に動けない」
- 「通信が制限されている」
- 「軍の規定で直接送金できない」
そして最終的には
「任務中にトラブルが起きた」「帰国費用が必要」
などと金銭要求につながります。
■ 2. 医師・外科医
医療職は“誠実・高収入・信頼できる”というイメージが強く、詐欺師が好んで用いる肩書です。
写真が白衣姿である場合は特に要注意です。
メールアドレスがGmailやYahooの場合、公式性がないので疑ってください。
■ 3. 海外大手企業のエンジニア
「海外の油田で働いている」「建設プロジェクトの責任者」などもよくある設定で、
「現場で事故」「資材の支払い」などの嘘に繋がりやすい構造です。
■ 4. 海外在住で“会う約束をするが必ず直前でキャンセル”
この行動は詐欺師に共通しており、
- 親族の病気
- パスポート紛失
- 税金滞納
- 事故
など毎回違う理由を使って会えない状況を作ります。
どれほど魅力的なプロフィールでも、
肩書が現実離れしている・会えない理由が続く・ビデオ通話を拒否
この3点が揃えば詐欺の可能性が極めて高いです。
送金前に知るべき情報・第三者相談を挟む重要性
国際ロマンス詐欺の被害者が共通して後悔するのが、
「誰にも相談せず、ひとりで判断してしまった」
という点です。
詐欺師は相談されると困るため、
- 「二人だけの秘密にしよう」
- 「家族に言うと不安にさせるよ」
- 「私を信じてほしい」
などと“第三者を遠ざける発言”を必ずします。
これが最も危険です。
■ 送金前に必ず確認すべきポイント
- 本名・職業・住所は公開情報で確認できるか
- 送金理由に法的な根拠があるか
- ビデオ通話は一度でも成功しているか
- SNSの投稿が“一定期間でまとめて作られた偽物”ではないか
- 送金先が個人口座・暗号資産ウォレットではないか
これらのうち一つでも怪しい点がある場合は、すぐに立ち止まるべきです。
■ 第三者相談の重要性
- 友人
- 家族
- 職場の同僚
- 消費者センター(188)
- 警察のサイバー窓口
恋愛感情が絡むと、どうしても視野が狭くなります。
しかし、他人の視点なら“異常さ”がはっきり見えます。
国際ロマンス詐欺は「相談した瞬間に気づけた」というケースが非常に多く、自分の直感よりも“他者の冷静な視点”が最大の防御になります。
国際ロマンス詐欺は、出会いの段階で違和感に気づければ、ほぼ100%回避できます。
プロフィール・肩書・メッセージ・送金依頼など、すべてが明確なサインです。

“疑ってから調べる”のではなく、最初から調べる姿勢を持つことが、もっとも確実な予防策になります。
国際ロマンス詐欺についてよくある質問
国際ロマンス詐欺に関する相談は、警察・消費者センター・弁護士事務所に非常に多く寄せられており、検索データでも
「国際ロマンス詐欺 見分け方」
「国際ロマンス詐欺 相談 どこ」
「国際ロマンス詐欺 お金返ってくる?」
「国際ロマンス詐欺 通報したい」
といった“検索ワード”が常に上位に並びます。

ここでは、現場で特に多い質問を取り上げ、専門知識と実務的な対処視点を交えて詳しく回答します。
Q. 国際ロマンス詐欺かどうか判断する基準はありますか?
判断には複数の要素の組み合わせを見る必要があります。特に次は強い警戒信号です。
- 海外在住/軍人/医師を名乗っている
- ビデオ通話を避ける or ディープフェイクの可能性がある不自然な映像
- 関係性が浅いのに愛情表現が過剰
- 早い段階でアプリ外の連絡先へ誘導
- 緊急でお金が必要とアピール
- 送金方法が暗号資産・海外口座
1つ当てはまっても疑うべきですが、3つ以上当てはまる場合は詐欺の可能性が極めて高いです。
Q. 国際ロマンス詐欺はどこに相談すればいいですか?
もっとも確実なのは以下の3つです。
■ 1. 警察(サイバー犯罪相談窓口)
正式な捜査が必要な場合や、被害金額が大きい場合は必須です。
■ 2. 消費生活センター(188)
海外送金・暗号資産・通販詐欺・投資詐欺どれでも相談できます。
金融機関とのやり取りについて助言してくれるのも大きなメリットです。
■ 3. 弁護士(特にインターネット犯罪に強い専門家)
証拠の整理、警察への提出資料の作成、金融機関への交渉などを依頼できます。
ひとりで悩むより、まずは初期相談を早く行うことが被害回復の第一歩です。
Q. 送金してしまったお金は戻ってきますか?
率直に言えば、戻らないケースが大半です。
理由は次の通りです。
- 暗号資産は追跡が困難
- 海外口座は凍結手続きが難しい
- 詐欺師が即時に資金を分散・換金する
- 送金行為が「自発的な支払い」に見える
- 取引所や銀行が海外の場合、法的強制力が弱い
ただし、以下のケースでは回収の可能性がわずかに残ります。
- クレジットカード決済 → 支払停止の抗弁権
- 国内銀行口座への送金 → 口座凍結・組戻し
- 初期段階での暗号資産 → 取引所への凍結申請
重要なのは、気づいた瞬間に行動することです。
Q. 「軍人です」と名乗ってくるのは本物の可能性がありますか?
結論として、本物である可能性は極めて低いです。
国際ロマンス詐欺で最も多く使われる肩書が「米軍所属」です。
理由は以下。
- 会えない理由を作りやすい(任務・規制など)
- 携帯が使えない設定も作りやすい
- 人道的に見えて信頼が生まれやすい
- 高収入のイメージがある
さらに、米軍は個人送金を禁止しているため、
「軍務でトラブルが起きた」「帰国費用がほしい」
という依頼自体が制度上不可能です。
“軍人”を名乗った時点で赤旗だと考えてください。
Q. SNSやビデオ通話をしていたのに詐欺の可能性はありますか?
あります。近年はむしろ増えています。
理由は次の通りです。
- AI生成プロフィールが本物そっくり
- SNS投稿を自動生成し、生活感を演出できる
- ディープフェイクによる偽ビデオ通話が登場
- 本物の人物の動画を編集して顔だけ差し替える技術が普及
「ビデオ通話ができたから安心」という基準はすでに通用しません。
Q. 相手が「秘密にして」「家族に言わないで」と言ってくるのはなぜ?
これは詐欺師がもっとも多用する心理操作です。
客観的な視点を持つ第三者が介入すると、
不自然さにすぐ気づかれてしまうためです。
国際ロマンス詐欺は、被害者が
- 家族
- 友人
- 同僚
- 専門機関
に相談した瞬間に破綻することが多いため、
「誰にも言わないで」を必ず強調します。
この言葉が出た時点で、すでに危険領域に入っていると考えてください。
Q. 相手のSNSがしっかりしている場合でも詐欺の可能性はありますか?
あります。SNSが“しっかりして見える”のは、むしろ詐欺師の常套手段です。
例えば、
- Instagram の美しい旅行画像
- Facebook の家族写真(盗用)
- LinkedIn の職歴(虚偽)
- Twitter の何気ない日常投稿
これらすべてAIや自動化ツールで作れます。
SNSの充実度=信頼性という考えは、今の時代には通用しません。
Q.「自分は大丈夫」と思っていても騙されることはありますか?
あります。むしろ、
「自分は騙されない」と思っている人ほど狙われやすい
という調査結果もあります。
国際ロマンス詐欺は、
- 孤独
- 承認欲求
- 不安感
- 恋愛感情
といった“無意識レベルの弱点”を突きます。
これは知識や学歴とは関係ありません。
医師・弁護士・経営者・公務員など、社会的地位のある人でも普通に被害に遭っています。
Q. どうすれば国際ロマンス詐欺を避けられますか?
最も効果的なのは以下の3つです。
- 送金しない
- 個人情報を渡さない
- 第三者に相談する
この3つを守るだけで、ほぼ100%回避できます。

一人で抱え込まず、疑問を感じた時点で必ず誰かに相談することが、最大の予防策であり、最善の防御になります。
まとめ|「遠距離だからこそ」慎重に、信頼を自分で守る
遠距離やオンラインでの関係は、温度感をつかみにくいぶん判断が揺らぎやすく、少しの迷いが大きな損失につながるケースも多いです。

だからこそ、冷静に状況を見つめ直し、自分自身の判断基準をしっかり持つ姿勢がとても大切です。
情報リテラシーこそ最大の武器
国際ロマンス詐欺は、甘いメッセージや優しさの演出で相手の不安や孤独を緩ませ、支配的な流れに運び込む構図が多くみられます。相手の言葉が魅力的でも、メッセージの裏側にロジックや根拠が見えないなら注意が必要です。送金理由が抽象的、プロフィールの情報に不自然な点がある、ビデオ通話を避ける、距離を縮めるスピードが早すぎるといったサインはすべて判断材料になります。
つまり、判断力を支えるのは知識そのものです。詐欺の手口を知ることで相手の行動に違和感を覚えやすくなり、無理な要求に巻き込まれにくくなります。情報を知っているだけで視界が広がり、落ち着いた判断へとつながりますね。
ロマンスではなく“信頼できる関係”を優先する
遠距離の相手とメッセージを重ねると、短期間でも親密さを感じやすくなります。ですが、恋愛に似た感情が芽生えた瞬間こそ慎重さが求められます。
本当に信頼できる相手なら、
- 金銭に触れない
- 秘密を強制しない
- 家族や友人に紹介することを避けない
- 会う約束が曖昧にならない
という行動を示します。
逆に、心の距離ばかり縮めようとするのに、会話の具体性が薄い、生活が見えない、言葉だけがきれいに並ぶ場合は、詐欺の構造に巻き込まれやすい状態です。
ロマンスを優先するよりも、冷静さと信頼の積み重ねを見極める目を持つ方が安全につながりますね。
判断保留で一晩考える習慣を
国際ロマンス詐欺の被害者がよく語る後悔のなかに
「思い返せば違和感はあったのに、勢いで判断した」
という声が多くあります。
勢いで判断しないための最も簡単で効果的な方法が、一晩寝かせる習慣です。
- 相手から急なお願い
- 緊急を装った金銭要求
- 個人情報を求められる
こうした状況に遭遇したら、返事をすぐに返さず、必ず時間を置くことで心が落ち着きます。
距離がある関係では、スピード感がそのまま判断ミスを生みます。
一晩置くだけで視野が広がり、第三者の意見を聞く余裕も出て、詐欺の流れを断ち切る力が生まれます。
国際ロマンス詐欺は、情報の取り方と向き合い方が変わるだけで、劇的に回避しやすくなります。
遠距離での関係だからこそ、信頼を自分で守る姿勢が重要です。

恋愛の魅力や期待が高まった時ほど落ち着いて状況を見ることで、自分の判断に自信を持てるようになりますね。

